そこは彼となし

日記のようなもの

クジラ 一.

 

 

深い深い海の底、光は届かず地底の音、僕は今そこに来ている。

 

冷たく静かで時々目を覚ますとここはどこだっただろう、と思う。

口先から尾びれまでがいつか水に溶けて、僕はまたどこまでも泳ぎ続ける。

そんなことを考えていた。

 

ああ、どこからか歌が聞こえる。

仲間が僕を呼ぶ声。

 

でももう少しだけここに居たい。

静かな海底に身を任せて沈んでいたい。

 

ねえキミは、

またどこからか僕を呼ぶ声?

 

ああ、君は、

そろそろ浮上しないといけないね。

 

胸びれで水を押して体をくねらせる。

光が差してきて、眩しいなと僕は思った。